うつ病の診断と症候学

大うつ病性障害の診断基準では、

  1. 抑うつ気分
  2. 興味や喜びの減退
  3. 体重減少
  4. 不眠あるいは過眠
  5. 精神運動性焦燥あるいは制止
  6. 疲労感あるいはエネルギーの減少
  7. 無価値感あるいは過剰な罪責感
  8. 思考・集中力の低下あるいは不決断
  9. 死についての反復思考

という9項目が主症状として考えられている。

 特に児童期におけるうつ病に関しては抑うつ気分に代わってイライラした気分をしめ ることがあり、体重減少に関しても成長期にある子どもにおいては期待される程の体重増加がなくてもこれに当てはまる。

病態像

小児期

・イライラ、情動反応、不安や行動上の問題、ADHD、身体症状

思春期

・イライラ、情動反応、過眠、食欲亢進・体重増加、身体症状、拒否への過剰反応に
による対人関係の不安定さ

 成人

・無快楽、情動反応の欠落、精神運動抑止、焦燥感、日内変動、早朝覚醒

リスク要因

生物学的要因→うつ病の家族歴

物質乱用
双極性障害の家族歴
女性
思春期
慢性疾患
うつ病の既往歴

心理学的要因→併存障害の有無

非常に感情的な気質
低い自尊感情
心的外傷
喪失体験

家族的要因 →虐待

親の拒否
親の精神疾患
親子間の葛藤

社会学的要因→いじめ

同年代の犯罪者
難民・ホームレス

経過

自殺の危険

子どもの自殺

人口10万人対

平成22年度厚生労働省死亡統計

職業

このうち12名は精神疾患に罹患

発達に伴う小児の死の概念の変化 *「知能の誕生」 ジャン・ピアジェ(著)

平均年齢7.4歳(前操作期)     全ての物や人は生きていて死ぬ可能性がある。
死は一時的なものである。
平均年齢10.4歳(具体的操作期) 外部の要因が死を引き起こす。
死は擬人化され、一時的な物である。
平均年齢13.3歳(形式的操作期) 内部の生物学的過程が死を引き起こす。
死は最終的なものである。

・子どもの発達が高くなるほど、死が非可逆的で永続的な出来事であることを理解する。

・子どもの認知の水準が、個人的な経験、子どもの感情状態は、子どもの死の概念に  重要な影響を与える可能性がある。

・思春期以前の自殺はまれであり、思春期以降に増加する。

・思春期以降では自殺の完遂は男児に多く、自殺企図は女児に多い。