・憂うつな気分(とくに月経の1週間ほど前)
・不安感が強い
・涙もろく、イライラや怒りっぽくなるなど、衝動的で情動の不安定が著しい

他、下腹部の違和感に悩まされる方々も多いとされています。

この診断には少々議論もあるが、女性の約5%は、月経の1~2週間前にはっきりとした苦痛、人間関係の障害、生活機能の減退を経験する。情動的な症状としては、不機嫌さや緊張、苛立ちの過度の昻進があります。
原因ははっきりわかっていないが、単純にホルモンの過剰や欠乏ということではないようです。幸いなことに効果的な治療法があります。もっとも効果があるのは排卵抑制(ただしこれには長期的リスクが伴う可能性もあります)と、SSRIの処方です。薬の効果は、抗うつ薬としての効果とは別と見られます。うつ病に対してこれらの薬の効果が現れるのには数週間を要しますが、PMDDでは即効性があります。
それほどひどくはないが不快な症状があります(月経前症候群-PSMと呼ばれる)という女性は数多くいますが、こういった女性には、食事療法やエクササイズ、認知行動療法などが効果的なようです。一日50~150ミリグラムのビタミンB6や、マグネシウム、トリプトファン(一日6グラム)、メマツヨイグサ・オイルも効果があるかもしれません。膨満感や苛立ちが見られる場合は、利尿剤の処方も有効なことがあります。経口避妊薬は効果が見られず、むしろうつ症状を引き起こす可能性があります。

brian P. Quinn 大野裕(監訳)・岩坂彰(訳) (2003). 「うつ」と「躁」の教科書 株式会社紀伊國屋書店

月経前不快気分障害

月経前不快気分障害は月経周期における気分の不安定性、いらだち、抑うつ、不安などの症状が月経の開始前に存在し、月経開始後の数日で改善し、月経終了後に最小化もしくは消失することを本態とします。診断には、患者の回想する症状ではなく、2か月前の前方視的な症状評価によって確認することが必要です(ただし、診断はこの確認に先立ち暫定的に下されてもよいです)。月経のある女性における12か月有病率は1.8%~5.8%といわれ、初潮の後であればどの時期でも発症しうるといえます。また閉経が近づくにつれ症状が増悪することもあるが、閉経後には症状は消失します。またストレス、対人関係での外傷体験、季節の変化、女性的に振る舞うことへの社会文化的側面、特に女性的行動に関する社会的役割などが月経前不快気分障害の発病と関連した環境因子とされています。

中川敦夫、大野裕.うつ病スペクトラムとDSM-5 診断カテゴリー 原田誠一(編)
メンタルクリニックでの主要な精神疾患への対応[3] 統合失調症、気分障害 中山書店 184-191.

治療方法

漢方薬かSSRIという抗うつ剤が必要となる場合が一般的ですが、気軽にご相談ください。