考えや気持ちがまとまらない状態が続き、「誰かにずっと監視・盗聴されている」「自分の考えていることが皆に筒抜けで、プライバシーがない」「まわりに人がいないのに誰かの声がきこえてつらい」など多彩な症状がみられますが、その原因は脳の機能にあると考えられています。

世界各国でも、約100人に1人がかかるといわれており、決して「特殊」ではありません。

治療として十分な休養はいうまでもなく、薬物治療が基本となりますが、各々の症状に合わせて、精神療法やリハビリテーションを随時組み合わせていきます。

患者に寄り添い支えることが大前提

 当然ながら、患者さんは薬を飲むだけで幸せになれるわけではありません。薬物療法は、医療者と患者の相互の信頼関係を基盤に、症状を上手にコントロールして患者さんが安定した生活を送りやすくするための支援策の1つです。「薬物療法によって精神症状は改善したが、患者さんのQOLは低下した」では、その後の社会復帰が困難になってしまいます。その点で、第2世代抗精神病薬が登場した意義は大きいものでしたし、長い年月を経た今もなお、統合失調症治療の主たる薬剤であり評価に値する薬です。
人生には自然災害や家族の死など、突発的なものから誰もが避けて通れないものまで、さまざまなライフイベントが存在します。統合失調症患者さんは、ストレス耐性の面で“崩れやすい”リスクを持っており、そうしたイベントに見舞われた際、十分に対応できなくなりがちです。大きく崩れてしまわないよう、維持量の服薬は継続するよう伝えています。孤独や見放され感情も重大なリスクとなります。

谷口典男.私がリスぺリドンを使う理由 Medical Tribune,2016年3月24日,1-4

患者さんのご家族が、低い感情表出であることは、患者さんの予後を良くするので治療上大事なことです。

低い感情表出の条件

  1. 批判しない
  2. 敵意を持たない
  3. 感情的に巻き込まれすぎない
  4. 褒める
  5. 温かい雰囲気の家庭をつくる

渡部和成(2015).専門医がホンネで語る統合失調症治療の気になるところ 星和書店

病状悪化の予兆に気づくために

不調の芽と考えられる症状は、不安、イライラ、怒りっぽさ、だるさ、疲労感、やる気の低調さ、感覚過敏、睡眠リズムの変化、頭痛(頭重)、食欲低下、便通の異常などです。
大事なことは、病状の悪化を防ぐためには、芽のうちに摘み取るようにしなければならないということです。不調の芽を自覚したら、早目のご相談をおすすめします。

家族はどのような支援を望んでいるか

家族支援に関する調査研究の結果からまとめられた【私たち家族の7つの提言】

①本人・家族のもとに届けられる訪問型の支援・治療サービスの実現
本人が自発的に受診ができない場合や症状が悪くなったときの訪問による治療、支援の場やサービスにつながることができない本人に働きかけるための訪問型の支援が必要です。訪問によって本人・家族に個別化した支援・治療を継続的に提供するサービスの実現を求めています。
②24時間・365日の相談支援体制の実現
困ったとき、いつでも専門家に相談できる場があれば安心です。夜間・緊急時に困難を抱えながらも相談先が見つからない本人・家族は少なくありません。24時間・365日の相談支援体制が必要です。また、緊急時はもちろん、日々の対応や生活の見通しをどのようにもてばいいのかなど、日常的な相談が気軽に安心してできる場も家族は求めています。
③本人の希望に沿った個別支援体制の確立
本人が家族や地域社会とのつながりを回復し、人生に対する希望を失わず有意義な生活ができるよう、医療のみならず、包括的な回復志向の支援を実現することが必要です。日中活動の場の提供だけでなく、本人に対する復職・復学などに向けた個別支援体制の確立を求めます。
④利用者中心の医療の実現
病気になった初期の段階から、本人・家族が医療の主体として尊重され、納得のいく医療が受けられることが重要です。本人・家族が治療計画に積極的にかかわれる医療体制の実現を求めます。
⑤家族に対して適切な情報提供がされること
病気になった初期の段階から、迅速に病気に関する正確な知識、対応方法、回復の見通しなどについて家族に情報がていねいに提供されることを求めます。また、すべての国民が精神疾患に対する正確な知識をもつことが可能となるように、学校や職場、地域などにおいて継続的な啓発活動を行うことが重要です。
⑥家族自身の身体的・精神的健康の保障
家族の身体的・精神的健康が過重な介護負担によって大きく損なわれています。家族依存の医療や福祉のあり方を改め、家族が身体的・精神的に健康を維持し、有意義な生活を送れるように保障する社会的支援が必要です。
⑦家族自身の就労機会および経済的基盤の保障
介護に縛られた生活によって家族は就労機会を奪われています。それによって経済的不安を抱えながらの生活を強いられています。家族の就労機会均等を保障する支援制度、もしくは介護労働に対する対価としての経済的保障が必要です。

(全国精神保健福祉会連合会.2010より)

一日も早く治療を開始した方が症状が回復しやすいことから、どうぞ、気軽にご相談ください。