院長のとっておき ~患者様へ~
①折り合い
この世にうまれた限り、「ここでうまれてよかった?」「この容姿でよかった?」「この足の速さや成績でよかった?」「この学校、仕事でよかった?」など、誰もが幾度も悩み、その都度これらの葛藤やストレスと、どうにか折り合いを重ねてきたものと思います。
とりわけ、「重大なできごと」に動揺するのは当たり前(ふつう)のことです。
はやるお気持ちは理解できますが、大切なことは、すぐに結果を求めず「焦らないこと」です。
焦っても空回りするだけで、中・長期的に眺めれば、むしろ、望ましい方向に傾くことは少ないように思えます。
自分や周囲からの基準や評価だけではなく、己の評価の基準をしっかり確立できれば、必要以上にうろたえることもないでしょう。
様々な段階で、「評価されなかった」などと、容易にやる気をなくしてしまうのは実にもったいないことと考えます。
とにかく、焦らず、自分を信じることが人生の基調となるといえるでしょう。
「評価されなかった」「納得できなかった」「プライドが傷ついた」など、まるで、自分というひとりの人間や人生そのものの評価であるように思い込み、周囲からも少なからず左右され、振り回されている場合が多いようです。
安心し過ぎす、心配し過ぎず構えずに。
追って、腹式呼吸の効用などや、小生がスポーツインストラクターをしていた経験から、サポートしていく所存です。
緊張がなかなかとれない~腹式呼吸でリラックス~
人は、ストレス状態にあると、無意識に呼吸が浅くなります。呼吸が浅い状態では、脳を含めた体全体へ酸素が行き届かず、リラックスした状態が得られません。疲れている時や眠い時にあくびがでるのも、脳が酸素を欲しがっているからです。
これを1分ほど繰り返してみましょう。
横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター 山本晴義 曽田紀子共著
働く人のメンタルヘルス教室 より引用
深く呼吸するための方法
驚くかもしれませんが、もっとたくさんの息を吸い込むのではなく、しっかりと息を吐き出すことを学ぶのが呼吸を深くするのには重要です。完全にリラックスするには息の吐き出しを吸い込みよりも長くするべきです。
Lorna Myers(2015).心因性非てんかん性発作へのアプローチ 医学書院
運動
1回45分間、週に5日の運動(exercise)は中等度うつ病を改善した報告があり、運動の効果は年齢、性別、うつ病の重症度、運動の種類とは関連がありませんでした. うつ病への作用は、脳内のセロトニン、ノルエピネフリン、エンドルフィンの増加によります.
上田容子.気分障害圏の代替療法の可能性について 原田誠一(編)
メンタルクリニックでの主要な精神疾患への対応[3] 統合失調症、気分障害 中山書店 270-275
②笑顔
少しでも笑顔を心がけることができると、だんだんとですが、悩んでいたり、不機嫌でいることさえバカバカしく思え、気づいてみれば吹っ切れていてびっくりするほどのパワーが湧いてくることがしばしばあります。
笑顔、こころからの「腹を抱えるほどの大笑い」は、身体面、精神面を問わず、悩みごとの、ものすごい回復力のエネルギーとなります。
③不安・緊張
一般的に、ストレス状態では、呼吸が浅くなり、くつろげないことが多いとされています。
リラックスできずに疲労がたまっている方や日中に眠気をさして、つい、「あくび」がでてしまうのは、脳が酸素を要求している一つのサインと周知されております。
④身体を動かす
こ難しい・意識的・精神的なことに拘泥するより、むしろ身体的な問題こそが精神面を考慮する上で大切な基調と考えます。
たまには力まず、まずは5分程度の散歩などを行って、ストレスの発散や気分転換を図ることが健康の白眉といえるでしょう。
⑤マニュアル
マニュアルさえあれば、なんとなく「安心できるし、やれそうです」などとよく耳にしますが、全くマニュアルが存在しないのも問題でしょうが、それ以上に
常識的な範囲で、「具体的・積極的」に仕事や作業に臨めば、おのずとどういう手順がいいのかといったイメージを、無理なく体得できるものと思います。
一方で、劣悪な職場環境下において独りで業務内容を抱え込むことで、同僚や上司などに相談できずに、周囲との接触(コミュニケーション)を遠ざけることなどから、身体的・精神的な不調を訴える方々を多勢おみかけいたします。
下り坂と思える状況下で、いち早く立ち直り、道を切り拓いていく方々に対して悪い印象をもつ人はいないでしょう。
どうぞ気軽にご相談ください。
⑥不安とのたたかい
なにがあっても、まず素直にその事態をうけとめ、本質を見誤ることなく平穏に対応する覚悟をもっておくことです。
さまざまな不安や苦悩などを、すべて理解して、対処できないことは十分に承知しております。しかしながら、「わかろうとする気持ち」は揺るがず、たじろがず、小生の矜持を貫いていこうと思っております。
あらゆる不安などについて、自分に自信のない方々は、むしろ堂々巡りのあげく、袋小路となり、疲労困憊してしまうことが多いようです。そのような方々は、幾多のストレスや変化にうまく対応することが不得手なため、これまでにはないような「単純なミス」を繰り返してしまう場面が珍しくありません。むしろ、強い責任感や周囲を気遣うあまり、「ガソリン切れ」の状態と考えます。したがって「性格だから」などと、ご自分を必要以上にお責めになることはやめましょう。
目標: いざという時にこそ、大らかにありたいものです。
7.悩んでない人間なんていない
自分自身が不安でや恐怖に耐えられず、あれこれと思案をめぐらす方々が多くおられます。
大切なことを見失い、むしろ虚しさだけが「身にしみる」。
「今、何をすべきか?」
先ずは、「今を生きること」が要でしょう。
「これでいいか?」「このままでいいのか?」などと、とめどもない不安や恐怖に襲われることもおありでしょう。
あくまでも大切なことは、それらに対していたずらに逐一動揺しないことが、支柱と考えます。生きていくことは、つらいことも少なくなく、こころから敬し、素直にしみじみと信頼できる相手と語り合い、生きていることから幸せの巾を拡げていく作業を慌てずに、一歩一歩でも進めていきたいものです。
8.落ち込みやすい方へ
他者を気にしない、「期待値」を下げることができれば、少しは楽に生きていけるものと思います。
うまくいかなかったと思っても、ほどほどで問題ありません。
「カッチンコッチン」にならず、むしろ、できる範囲で、「できたこと」「よいところ」を探すように心掛けましょう。
人生は短く、今日、今この瞬間瞬間を症状と「がっぷり四つ」で過ごすのは「貴重な人生」からすれば、もったいないように思えてなりません。
9.こんな時こそ素直なままで
ひとは、みな凡人で、才能とは根気である。弱さが魅力的に思われる人になりたいものです。
自らの凡庸さを受け止め、誠実に、当たり前のことを当たり前にやることだけで、何の問題もありません。
むしろ、本物です。
日々を焦らずに、楽しく、笑って、元気に過ごしていくことこそが大切です。
笑顔は、元気。喜びの素といえるでしょう。
こころにも深みが増すようです。
また、そのときどきを素直に自然体で生きていくことも大切に感じます。
そんな中で、ひとつでも感動できるエピソードの積み重ねこそが、ひとの行間を広くさせて、より感性(個性の違いだけ)が養われていくように思えます。
その感性をいかして「遊び」を取り入れることで、よっぽど仕事や家事、育児、勉学が充実していくようです。
うんと「遊び」ましょう。
ひととしての「分母」が大きくなり、「ゆとり」がうまれてくるようです。
10.気持ちの軸がブレないために
さまざまな通信媒体から、情報を少なからず得ることで、今の日本が浮き足立っており、「今何をすべきか」という、最も自然体で生きていく上で大切な根っこが、小医のわずかな診療の経験から、大きく揺らいでいるように思えます。過去のことを想い出しては「なげき」、1日中堂々巡りをして、精神的に疲れ果てている方々が多勢おられるに違いありません。そこで、まさに、その「なげきスイッチ」に入りそうだなと感じたら、即座に少しでも、自分の気持ちが、上向きに、そして、くつろげてのんびりできる「カード」を何枚か用意しておくことこそが肝要です。そのカードのpointは、心から楽しく気持ちがワクワクするカードです。少し考えてみていただけると幸いです。
11.本当の応援とは
どんな病にしろ、ご家族の「本当の理解」がなければ、当人がひどく苦しみ、「孤立無援感」という感情に溺れ、スムーズな回復傾向に至らないことは充分に予見されます。小医の少ない経験からにすぎませんが、診察場面にご家族がほぼ常に同席される方のしっかりとした回復スピードは、一人で受診される方よりも遥かに高いようです。
すぐに「なまけてる」「仕事を探せ」「何考えてるんだ」「根性がない」「甘えてる」などといったプレッシャーを家人から「押しつけられてる」当人の気持ちは焦るばかりで、ものすごい「空回り」となり、当人を精神的に追い込んでしまいます。むしろそのままで上手くことが運んだ方々をおみかけしたことが少ないというのが実情です。また、ネットサーフィンばかりしていても、いわば机上の空論ですから、先ずは、ご家族同伴の診療をおすすめします。
12.自殺が医療スタッフに与える影響
・精神科医(N=269, 米国)
多くが自信喪失、自責感、怒りなどを経験25%は、親との死別と同等のストレス
(Chemtob,C.M.et.,Am.J.Psychiatry,1988.)
・医療スタッフは、ケアにミスはなかったか、なぜ気づけなかったのか、あの時こうしていたら自殺しなかったのではないか等、医療者としてのアイデンティティや自尊心が脅かされることもまれではない
(認定病院患者安全推進協議会:患者安全推進ジャーナル別冊、病院内の自殺対策のすすめ方、2011年)
自殺の対人関係理論
(Joiner,Jr.T.E.,et al.:The Interpersonal Theory of Suicide:Guidance for Working with Suicidal Clients.,2009より)
続きは診療室でお話しましょう。